「倍率」より大切なこと

みなさんからよくいただく質問として、受験先や併願先に関するものがあります。

特に、「倍率」に関する質問は定番です。多くの方は、

「倍率が高い(低い)」
   ↓
「難易度が高い(低い)」
   ↓
「合格しにくい(しやすい)」

と考えているようです。

確かに倍率は分かりやすい指標ですし、試験の難易度と全く関係がないということもありません。

ただし、試験の難易度を判断する要素としては、慎重に理解する必要があります。

試験種にもよりますが、公務員試験は倍率が5~10倍程度のものが一般的で、経験者採用試験や小規模な自治体では、30倍とか50倍というような倍率も珍しくありません。

50倍ということは、100人受験生してもわずか2人しか合格できないということですから、非常に難しい試験なのか?と見えなくもありません。

しかし、実は単純に見せかけの数字が独り歩きしているという側面もあるのです。

ご存知の通り、公務員試験の大部分は受験料が無料です。また学歴も要求されないことが多いので、年齢制限さえクリアしていれば、誰でも受験することができます。

そのため、いわゆる記念受験やとりあえず受けているという人がかなりの数にのぼっているのが現実です。

特に地方では、親や学校の先生に受けろ言われたから、勉強は全くしていないけどとりあえず申込みだけはして受けました、というような人がけっこういます。

一方、さまざまな資格試験は受験料が数千円から数万円までと有料ですので、「受験勉強は始めたけど、まだとても合格できるレベルじゃないから受験しない」という人もかなりいると思われます。

このように、公務員試験では、ひと通りの勉強をしっかりして、ある程度本気で受験している人の数は、実はかなり少ないとみていいのです。

 「倍率」だけで難易度は決まらない

また、そもそも「倍率」は、試験の難易度を表す要素の1つに過ぎません。

試験の難易度は、

(1)倍率

のほかに、

(2)その試験そのものの難しさ
(3)その試験の受験生のレベル

などで変わってきます。(2)は当然として、あまり指摘されないのが(3)です。

仮に「同じ倍率」の試験が2つあったとして、ひとつの試験の受験者は全員小学1年生、もうひとつは受験生が全員東大生だとしたら、どちらが難しい試験なのかは言うまでもないはずです。

たとえば、東京都I類B(一般方式)の試験は、

マークシート(択一)方式の教養試験
記述方式の教養論文(1問)
記述方式の専門試験(3問)
面接(1回)

です。上記(1)「倍率」は、約6倍ですから、特に高いということもありません。また(2)「その試験そのものの難しさ」を見てみると、筆記試験自体は難しいものではありません。というか、公務員試験全体でみると、東京都の問題はどちらかというと簡単なほうです。

だからといって、東京都の試験の難易度が低いか?というと、そうとも言い切れません。

上記(3)「その試験の受験生のレベル」も考慮する必要があり、東京都庁の受験生は、中学受験や高校受験、さらに大学受験を通じて「受験テクニック」に長けている受験生が多く、比較的受験生のレベルが比較的高いと考えられていることから、それほど簡単な試験ではないということになります。

このように、試験の難易度は複合的な要因で決まるので、「倍率」だけで判断するのは早計なのです。

 「倍率」より大切なこと

公務員試験には、筆記試験だけでなく面接試験もあるということも注目すべきポイントです。

面接試験で問われる最重要質問のひとつに「志望理由」があります。面接官に強く訴える志望理由を練るにあたって、「何がやりたいか」ということを明確にするのは非常に大切ですが、例えば都庁と特別区とを比較してみてください。

両者は、勤務する地域こそ似ていますが、同じような分野であっても業務内容はかなり異なり、どちらを選ぶかによって、「やりたいこと」が実現できるかどうかも大きく変わってきます。

「そんなことは重要な問題じゃない。とりあえずどっちか受かればいい」という方もいるとは思いますが、少なくとも、その志望理由を面接官にわかってもらう必要があります。

「本当はこっちじゃなかったんだけど、倍率が低いからこっちにした」という場合は、志望理由を取り繕う必要が出てくる可能性があるので、面接官に説得力のある志望理由を伝えきれない可能性も出てきてしまいます。

一方、「やりたい」と思っていることが実現できる受験先のほうが、無意識のうちに志望理由にも厚みが増しますし、その結果、説得力も高まっていきます。

つまり、倍率に関係なく、「こっちで働きたい」と感じる方を受験するほうが、結果的に面接の評価が高くなり、多少倍率が高くてもクリアできる可能性が高まってくるのです。

こういったことを考えると、どの職種を受けるか、またどの職種を第一志望とするかについては、「倍率」の観点だけから考えるのではなく、最終的には「働く場所」を決めるという、公務員試験の受験という就職活動の本来の目的に立ち返るべきだということが大切だと分かっていただけると思います。

公務員試験の受験は、合格することがゴールではありません。同じ公務員でもどこで働くかによって、人生は大きく変わってきます。多くの時間を割くことになる「仕事」を通じて、どのような人生を送りたいのかということをじっくり考えながら志望先を考えてください。