公務員試験の教養論文の背景にあるもの

都道府県や市役所の教養論文では、それぞれの自治体が抱える課題にどのように取り組むか、ということが問われます。配点も高いケースが多く、試験に合格する上で最も重要な科目となっています。

では、教養論文で問われる「自治体が抱える課題」は、一言でいうとどこに行き着くのでしょうか?

それが分かれば、教養論文の出題傾向がはっきりと見えてきます。

答えから書いていしまうと、その行き着く先はズバリ、

「財政の健全化」

です。財政の健全化は、すべての自治体にとって至上命題といっても過言ではありません。なぜなら、財政状況が悪化していると、その自治体で実施される行政サービスの質が低下し、ひいては地方自治体の存続そのものが危ぶまれる事態すら招きかねないからです。財政の健全化は、文字通り「自治体の死活問題」になるのです。

だからこそ「財政の健全化」を達成、維持、回復していくために、どんな課題が存在し、それらにどう取り組めばいいか。そうしたテーマが毎年毎年繰り返し、公務員試験の教養論文で問われているのです。

たとえば「生産年齢人口の減少」という課題

さて、財政状況の悪化を引き起こす原因には、いくつか大きなものがあります。その代表例が「生産年齢人口の減少」です。

生産年齢人口とは、国内で行われている生産活動に就いている中核の労働力となるような年齢の人口のことで、具体的には15歳から65歳未満の年齢に該当する人口をいいます。

この世代は、日常的に仕事をしたり、さまざまなモノやコトを消費したりと、各自治体の経済社会に大きな影響を及ぼしている人たちです。この世代の人口が減少していくと、生産活動や消費活動が低迷し、税収が減少し、その自治体の財政状況が悪化していくことになります。

こうした観点で教養論文の問題をよく見ると、生産年齢人口を増加、維持、回復させるるためにはどうしたらよいか、という課題に読み替えられる内容が非常に多いことに気づきます。

山形県の教養論文

まずは、平成29年度 山形県の出題を見てみましょう。

「女性の活躍を推進するにあたっての課題を一つ挙げ、行政が取り組むべき対応策について、あなたの考えを述べなさい。」

前述したとおり、企業の働き手である生産年齢人口が減少すると、企業の生産活動が回らなくなり、その結果地域の経済が縮小していく危険性があります。となれば、とにかく生産人口の減少を防がなければなりません。

そこで、これまでは働き手として労働市場に進出していなかった人口グループを、あらたに生産年齢人口に加えたいとなると、まず目が行くのが女性層ということになります。

日本国内の女性層は、いわゆる「M字カーブ」が示すとおり、出産や育児のため離職せざるを得なくなるケースが多いため、30代の労働力率がそれ以外の年代のそれよりも低いことが指摘されています。つまり、「女性層の生産年齢人口がなかなか増えない」という課題を、多くの自治体が抱えているのです。

そのため、この年代の女性を中心に働きやすい環境を整えていくことは、減少する生産年齢人口にストップをかけるための効果的な取組み(解決策/施策)のひとつになるのです。

三重県の教養論文

次に、平成28年三重県の出題はどうでしょう。

三重県内の人口減少及び少子高齢化は深刻であり、地域の活力の低下が懸念されています。一方で、三重県の永住者として在留する外国人住民は増え続けており、外国人住民には「労働力」だけではなく、地域の担い手としての活躍が期待されています。
文化的背景の異なる人々が一緒に地域社会を築くために、行政としてどのように取り組んでいく必要があるか、あなたの考えを論述してください。」

この外国人労働者に関する出題には、日本人の生産年齢人口が減少するんだったら、海外から来てもらおう、という発想が、その根幹にあります。これもまた「生産年齢人口の減少」という課題に対する効果的な取組み(解決策/施策)のひとつについて論ぜよ、という趣旨にほかなりません。

岡山市の教養論文

もうひとつだけ、平成28年岡山市の出題を確認しましょう。

「待機児童ゼロを実現するための課題とその解決策について、あなたの考えを述べなさい。」

シンプルですが、これは、岡山市を待機児童の少ない自治体にすることで、子育て世代の大人、つまり生産年齢人口ど真ん中にいる労働層の流入・定着を促進する取組み(解決策/施策)についての論文を書かせるものです。

さらに広げて考えれば、そうした取組み(施策)によって岡山市少子化に歯止めをかけることができれば、将来、その地域の中核を担う生産人口を増やしていくことができる、そういう展望をも含んでいる出題です。


いかがでしょうか?

このように、各自治体の取組み(施策)は、すべて「自治体の財政をどう健全化するか」ということに集約されていきます。その悪化の原因である「生産年齢人口の減少」という、ひとつの課題にスポットをあてただけでも、山ほどの教養論文過去問が出てきます。

「財政状況の健全化」

という視点を持って自治体の取組み(解決策/施策)をあらためて見直し、教養論文の対策を進めれば、これから多くの「なるほど!」に出会うことができるはずです。