教養論文合格答案の書き方(後編)

で、答案構成の「骨格」について話しましたが、今回は答案構成から答案へ書き上げる際のポイントを中心に解説します。

答案構成における注意点

(1)事前に時間配分をしっかり決めておく
言うまでもなく試験時間には制約があります。答案構成に必要以上の時間を掛けないよう心がけてください。答案構成はバッチリ書けたのに、残り時間が足りなくて字がグチャクチャになったり、途中答案になったりしたのでは本末転倒です。

とはいえ、あまりに答案構成を急ぎすぎると、答案づくりの最中であらぬ方向に論が進んでしまったり、論の展開に行き詰まってしまったりするおそれがあります。事前に論文を練習する中で「答案構成と答案づくりに掛ける時間配分」を、自分なりにしっかり決めておいてください。

(2)「きっかけ」だけを丁寧にメモる
答案構成というのは自分の頭の中にある情報や考え方を引き出す「きっかけ」に過ぎません。その「きっかけ」さえしっかりメモっておけば、あとは芋づる式に書くことができます。

それぞれの「きっかけ」をつなぐ途中の言い回しや展開部分については、本番までやってきた論文の練習や自分の国語力を信じ、答案を作っていく際に柔軟性を持って書き足していく感じを体得してください。

(3)できるだけ「実際に書く順番」にメモる
答案構成ですから論を進める順番にメモるのは当然なのですが、書くべき項目を思い出した順番にメモって、そのまま答案づくりに入る方が少なくありません。たとえ書くべき項目がちゃんと揃っていても、それらがアトランダムに並んでいるメモを見ながら答案を書くのは避けてください。自分ではちゃんと拾って書いているつもりでも、論旨が飛躍したり、一貫性のない答案になったりする危険性大です。

また、答案構成をメモっている段階で抜けている項目に気づいたり、項目の順番を変えようと思ったときは、そのことを丁寧に記号で書き加えてください。たとえば、足そうと思った項目があるなら、矢印で行間にちゃんと挟むように書いたり、項目の順番を変えるなら、それがひと目で分かるようにナンバーを振り直したりするということです。答案づくりに入った際に、答案構成を見ながら混乱しないことが大切です。

自分が作った答案構成に「息吹を与える」

こうして答案構成ができたら、あとはひたすら答案を書いていくだけです。逆に言えば、答案づくりの最中にほとんど迷わず書き進められる答案構成こそベストです。

先ほども触れましたが、答案構成から答案づくりに移行したあといちばん大事なのは、メモをした「きっかけ」である項目どうしをいかにスムーズにつなげていくかという点です。

この段においては、自分が作った答案構成に「息吹を与える」という感覚を強く持ってください。まだ荒削りのデッサンに過ぎない答案構成に、明確な線を書き込み、彩りを添えて書いていくという感覚です。

具体的には、以下の2点を意識してください。

(1)答案構成の項目を自分の言葉で「少し膨らませて」書く
 たとえば「マナーのズレ」というメモを「日本独自のマナーやルールとのズレ」と書いたり、「災害時の誘導」というメモを「万が一災害に遭遇した時に誘導が母国語でないために適切な避難ができない」と書いたりする要領です。

これは、メモ書きから少し膨らませて書く練習を意識的にやれば、思ったほど難しくありません。「習うより慣れろ」の典型ですから、ちょっとしたスキマ時間に繰り返し練習してください(やっているうちに言葉を膨らませて書くことがきっと面白くなってきますよ)。

(2)項目と項目をつなぐ表現は平易でよい
答案構成の項目と項目をつなぎながら答案を書いていくわけですが、その際に「あまり凝りすぎた表現を使わない」という意識も大切です。論文となると無意識に、格好のいい言葉=難しめの言葉を羅列しようとしてしまいますが、それはあまり好ましくありません。難しい言葉というのは、文意を抽象化する傾向があり、読み手にとっては、曖昧な表現の羅列に映る場合がすくなくないからです。

そんな言葉を多用するより、平易な言葉でわかりやすく書かれた文章のほうがはるかに好印象です。たとえば、解決策の部分で具体的な施策を書いたあと、「〜を施策として考えるのが肝要である」などと大上段に構えず、「〜などである」とシンプルに書いていいということです。要は、普段使わない不思議な言葉はあまり使わず、自分に馴染んだ言葉でしっかり書けばいいのです。


特別区 論文課題1】答案例

では最後に、前回答案構成した特別区の教養論文の答案例を載せておきます。もちろんあくまでひとつの例です。論文ですから、こう書かなければいけないということはありません。他の流れの答案構成でも、十分に合格答案になるものはあります。そこは誤解のないようにお願いします。


特別区 論文課題1】答案例
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 東京都内を訪れる外国人旅行者数は、平成29年には約1400万人であり、対前年比では5.1%の増加となっている。また、都内で働く外国人労働者は、少子高齢化を背景に受け入れが推進され、出入国管理法改正により受け入れ体制も整備されてきていることから、平成30年には約45万人になろうとしている。
 こうした外国人の増加は、彼らが多様な言語を話すことから、地域社会に新たな課題を生じさせている。
まず、外国人観光客については、観光や飲食、ショッピングなどで、言葉の壁があるために困惑やクレームが生じたり、日本独自のマナーやルールとのズレにより思わぬ誤解が生じたり、万が一災害に遭遇した時に誘導が母国語でないために適切な避難ができないなどの可能性も生じている。
 一方、外国人労働者については、長期間ないし一定期間日本に住むうえで、異なる言語を介して生活しなければならなかったり、日本語を通じてのやりとりが多い仕事環境での意思疎通が難しかったり、さらには言語が違う外国人同士のコミュニケーション・ギャップによる弊害も新たに生じてきている。
 これらの課題を解決するため、以下に具体的な取り組みを述べる。
 まず外国人観光客に対する取り組みとして、第1に「言葉の壁」を取り払うことが必要である。具体的には、(1)公共施設や主要観光地などでの多言語表示やピクトグラムの充実(2)小売店や飲食店などへの自動翻訳機の貸与(3)観光ボランティア講座を開設し、一定以上の外国語能力がある人を観光ボランティアとして登録するなどである。
 第2に、日本と外国との日常的なマナーのズレを解消し、無用な誤解や行き違いを避けなければならない。具体的には、(2)全世界をカバーする動画サイトを利用して多言語で動画配信し、日本独自のルールやマナーをあらかじめ観光客に伝達する(2)観光客が空港や港で入国する際、多言語でのルールブックを配布する(3)観光客が利用する宿泊施設での接客を通じて、日本でのマナーを実践的にアドバイスするなどである。
 第3に、観光客が災害に遭遇した時の安全を確保することも重要である。具体的には、(1)外国人観光客の誘導を考慮した多言語での避難訓練を実施する(2)宿泊施設や観光施設などに多言語で災害関連情報を流せるアナウンス設備を整える(3)外国人観光客に特化した非常時マニュアルや緊急連絡先リストを配布するなどである。
 次に、外国人労働者に対する取り組みとして、第1に、日本に住みやすい環境をつくる必要がある。具体的には、(1)外国人が平易に学べるオンライン日本語教育システムの整備(2)バイリンガル等外国人とのコミュニケーションに慣れた地元住民とのサークル活動の推進(3)行政窓口にタブレット端末を導入するなど多言語での手続きのシームレス化を進めるなどである。
 第2に、言語の壁を超えて仕事ができる環境をサポートすべきである。具体的には、(1)ハローワークや就職相談窓口に通訳を置くなど多言語化する(2)ビジネス系の場面で使える実践的な日本語スクールの充実(2)不安なく仕事をするため保育園や幼稚園への通訳カウンセラーの配置などである。
 第3に、異なる言語を話す外国人同士の衝突も回避しなければならない。具体的には、(1)異なる言語の外国人同士が参加する地域イベントを開催する(2)世界の文化・習慣の違いを解説するガイドブックを作成・配布する(3)多文化共生に関する授業やセミナーを学校や職場で実施するなどである。(1431字)以上
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教養論文というのは、何ページにもわたる長い論文ではありません。論旨に一貫性があって施策に具体性があり、いい意味で直線的な迫力ある答案が書ければ、自然に他を圧倒することができます。

「簡にして要」

この教養論文の極意を、決して忘れないでください。ご健闘を祈ります!