教養論文で見失ってはならないもの

「文章を書く力」と「問題文を読む力」

私たちは最近、LINE、InstagramTwitterといったSNSを使うことがとても多くなりましたね。そのことで短文や画像、動画など直感的なコミュニケーションが主流になり、世代を問わず「文章を書く力」が落ちてきていると言われます。

一方で、公務員試験の教養論文では、まさにこの「文章を書く力」が求められています。とすれば、これまで以上に「文章を書く力」を鍛えなければまずい、という意識が働くのも当然です。

ただ、あまりに「文章を書く力」だけに意識を奪われると、教養論文で本当に大切なものを見失ってしまう恐れがあります。

それは「問題文を読む力」です。

最近の教養論文では、問題文が長くなる傾向にあります。下記に取り上げる特別区の過去問でも、問題文が長くなると一見難しくなったように感じます。

しかし実はその逆です。

問題文が長いということは、ヒントがたくさんちりばめられているということ。「問題文を読む力」が高くなれば、答案に書くべき内容が自然に誘導されていることに気づくことができます。

それほどに「問題文を読む力」は大切な能力なのです。

問題文を整理して「丁寧に読み切る」

実際に教養論文の過去問を参考に確認してみましょう。

【2017年特別区I類】
少子高齢化が急速に進み、人口減少社会を迎える中で、社会の活力を維持し、持続的成長を実現していくために、社会のあらゆる分野において女性の活躍が期待されています。一方で、女性を取り巻く社会環境は、働く場での男女間格差の問題や家庭生活における役割の偏重など、女性の意欲や能力が十分に発揮できる状況にあるとは言えません。
このような状況を踏まえ、社会における女性の活躍推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

問題文をざっくり眺めると、「少子高齢化」「人口減少社会」「女性の活躍推進」といった、いかにも教養論文で出題されそうな用語が目につきます。教養論文用に仕入れた様々な知識や情報が頭に浮かんで、とにかく自分の書きたいことを書こうと考えてしまうかもしれません。

でも、あえてここで一呼吸おいて、問題文を「丁寧に読み切る」ことが大切です。

(1)問題文を丁寧に読んでいくと、ここで書くべき中心は『社会における女性の活躍推進』だということが分かります。この「書くべき中心」を見抜く力は、「問題文を読む力」の中でも特に鍛えるべき重要な力です。

(2)書くべき中心を見抜いたとはいえ、『社会における女性の活躍推進』ならば何を書いてもいいということではありません。

(3)その直前にある「このような状況を踏まえ」て書かなければダメです。

(4)「このような状況」とはどういう状況なのでしょうか。これを問題文から正確に引き出します。端的に「女性の活躍が期待されている」「一方で」「女性の意欲や能力が十分に発揮できる状況にあるとは言えない」という「状況」を抜き出すことができるはずです。

(5)さらには、その状況について、問題文に例示されている「働く場での男女間格差の問題」と「家庭生活における役割の偏重」などの観点を入れながら論じろ、という問題文のメッセージも読み逃してはいけません。それが「丁寧に読み切る」という趣旨でもあります。

(6)そして、「このような状況を踏まえ」た上で、「特別区の職員として」「どのように取り組むべきか」という観点から、「あなたの考えを論じなさい」というのが、この過去問の課題であることが鮮明になってきます。

(7)なお、「少子高齢化が急速に進み、人口減少社会を迎える中で、社会の活力を維持し、持続的成長を実現していくために」という前段については、少なくとも論じるべき本筋でないことを読み取ってください。背景としてサラッと書くかどうかも、この冒頭部分を「どう読み切るか」が判断の前提になります。

さて、ここであらためて問題文の「骨格」を整理すれば、

「女性の活躍が期待されている一方で、女性の意欲や能力が十分に発揮できる状況にあるとは言えないことを踏まえ」『社会における女性の活躍推進について(問いの中心)』「特別区の職員としてどのように取り組むべきか」「あなたの考えを論じなさい」

ということになります。

このように問題文を整理して「丁寧に読み切る」ことができる能力、すなわち「問題文を読む力」が、教養論文を書く大前提になっていることがおわかりいただけると思います。

「問題文を読む力」が「文章を書く力」を引き出す

「問題文を読む力」を鍛える方法として、ここ数年の教養論文の過去問を多読することをおすすめします。志望先のものに限らずさまざまな問題をランダムに読んでみてください。都道府県や市役所などについては、各自治体のHPで問題文が公表されていますので、100問くらいは容易に集めることができます。

1問あたり5〜10分くらいかけて読んでください。
大切なのは問題文の骨格を「丁寧に読み切る」ことです。
そして「問いの中心」はどこなのかを常にチェックしてください。

たくさん読んでいるうちに、得意なテーマについては書くべき「あらずじ」が浮かぶ場合があるかもしれません。そういうときはその問題で立ち止まり、簡単なメモで答案の流れを書いてみてください。

このとき注意すべきは「あまり書きすぎないこと」です。あくまで「簡単なメモ」にとどめます。「問題文を読む力」が「文章を書く力」を引き出すという感覚を、なんとなく意識できれば十分だと思います。

もう気づいた方もいると思いますが、この「簡単なメモ」が「答案構成」と呼ばれる、教養論文を書く上で必要不可欠なプロセスの原型となります。「答案構成」については、次回のブログで書きます。