2020年度に実施された横浜市(事務)の採用試験で出題された論文です。
横浜市(事務)では、2020年度から論文が出題されることになり、事前に公開されていた例題と同じく、資料を用いた形式でした。資料形式の論文は、横浜市の他にも国家一般職や東京都A・Bなどでも出題されています。
今回のテーマは、他の自治体でも出題される可能性が高いので、詳しく見ていきたいと思います。
(問題の画像は、横浜市を受験された方にご提供いただきました)
問題
次の2つの資料から、横浜において「住みたい」「住み続けたい」まちを実現していくために、あなたが重要と考える横浜市の課題及びその背景を簡潔に述べなさい。
また、課題に対して横浜市が進めるべき具体的な取組及びその効果を述べなさい。
<資料1>
<資料2>(2種類)
【1】まず、問題文を見ましょう。1文目に、
『次の2つの資料から、横浜において「住みたい」「住み続けたい」まちを実現していくために、あなたが重要と考える横浜市の課題及びその背景を簡潔に述べなさい』
とあるので、まずは「課題」の提起と、その前提となる「背景」(現状)の分析を述べる必要があります。
この点について、図表3つを見てみましょう。
<資料1>からは、「背景」(現状)が見えてきます。
東京都、千葉県、さいたま県、川崎市、相模原市など隣接・近隣自治体へは横浜市から人口が流出している一方で、それ以外の地域や外国からは横浜市への人口の流入が多くなっている。また、全体では転入が超過だが、転出との差はわずかである。
<資料2>からは、「課題」が見えてきます。
ごみ分別やバス地下鉄などの公共インフラに対する満足度は比較的高い一方で、災害対策、防犯対策、高齢者福祉などの分野については、要望が高いにもかかわらず満足度が非常に低い。
このことから、
「住みたい」まちの実現 → 人口の流入を増やす
「住み続けたい」まちの実現 → 人口の流出を減らす
ことを目的としながら、
満足度と要望の差が特に大きい「災害対策」「防犯対策」「高齢者福祉」の拡充・改善、充実する
といったことが最優先の「課題」であると提起することができます。
【2】次に、問題文の2文目に注目します。
『また、課題に対して横浜市が進めるべき具体的な取組及びその効果を述べなさい』
とあるので、上述のとおり提起した課題を解決するために、横浜市が進めるべき具体的な「取組」を述べることになります。
この際にしっかり注意したいのは、提起した「課題」について、「全て責任をもって回収する必要がある」ということです。自分で課題を提起したわけですから、それを解決するための「取組」を丁寧に「具体的に」述べていくのです。
先ほどの、
「災害対策」
「防犯対策」
「高齢者福祉」
について、「第1に〜」「第2に〜」「第3に〜」などわかりやすい構成で書けるとよいでしょう。
また「その効果についても述べよ」とあるので、それぞれの取組について、課題の解決に対してどのような効果があるのかについてもきちんと対応させて書くことができれば高い評価につながります。
このように見てくると、横浜市のような資料形式の問題でも、
「現状分析」
↓
「課題提起」
↓
「取り組み」
という、論文を書く上での王道たる「骨格」が生きています。一見難しいように見える資料形式の問題であっても、問題文の誘導を丁寧に読み取りながら「答案の骨格」を用いて完璧に書くことができるのです。
たくさんの資料を前にして慌てることなく、論文に不可欠の「3つの要素」が論述全体の流れを支えていることを忘れないでください。