国家総合職試験 時事問題 解説

4/25(日)に実施された国家総合職試験の基礎能力試験(教養択一試験)で出題された時事3問について、簡単な解説をつけました。間違いの選択肢について、この箇所については正誤判断ができたほうがよいという箇所に「✕」をつけ、また、それに対応してどのように間違っているのか、正しくはどうなるのかについて解説を赤字で加えました。

 

国家総合職の試験は、特別区、都庁、道府県庁、市役所などの試験との間で、出題の調整は行われていません。そのため、毎年のように、国家総合職で出題された問題と非常に似ている問題が他の公務員試験でも出題されています。新型コロナウイルスに関する出題も含まれているので、国家総合職を受験された方はもちろん、そうでない方もぜひ目を通してください。今後の時事対策の参考になると思います。

 

 

【No.28】近年の我が国に関連する科学や科学技術の動向についての記述として最も安当なのはどれか。

1. ニホニウム(Nh)は、我が国の研究グループが発見した原子番号113番の元素である。この元素は、加速器による実験で核融合反応により合成に成功したものであり、元素名を決める国際純正・応用化学連合により、発見を認定された。アジアで発見された初めての新元素であり、平成28年に日本にちなんだ名称に決定された。 現在、高等学校で使用している教科書に記載されている元素の周期表にも、Nhが明記されている。

◯ そのとおり。

 

2. 地質学では、地球史を「地質時代区分」に分けており、それぞれの時代を典型的に示す地層が存在する地名にちなんで命名されている。古生代末期✕を示す時代に、まだ命名されていない地質時代があり、我が国の研究グループは、千葉県のある地域の地層が、絶滅寸前の三葉虫やカヘイ石が古生代末まで生存していたことを示す典型的な地層であることを証明した。この地質時代は、国際地質科学連合の審査を経て、令和2年にチバニアン命名された。

✕ チバニアンは、新生代中期更新世(約77万~12万6千年前)なので、時代が全く異なります。問題文にある古生代は、2億5千万年以上前で、恐竜すら地球上にまだいなかった時代です

 

3. コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、人畜共通感染症を引き起こすDNAウイルス✕で、変異が大きく、新型コロナウイルス鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへの感染率や致死率が高い。マラリア治療薬✕のレムデシビルの開発に貢献した功績✕で平成27年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智らは、この薬が新型コロナウイルス感染症にも効果があることを突き止め、同感染症の最初の治療薬として、日本政府は世界で初めて承認した。

✕ コロナウイルスやインフルエンザウイルスはRNAウイルスです。また、レムデシビルは、エボラ出血熱の治療薬です。さらに、大村智ノーベル賞受賞理由は、アベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発です。

 

4. 我が国の研究グループが開発したスーパーコンピュータ「富岳」が、令和2年に計算速度で我が国としては初めて✕世界一となった。計算速度に関しては、これまで、米国とドイツが首位を争ってきたが、量子コンピュータ技術の開発が進み、我が国が世界に先駆けて次世代機としてその技術を投入した✕ことが計算速度世界一につながった。この「富岳」は、新型コロナウイルス飛沫感染のシミュレーションや富士山の火山噴火予知にも利用されている。

✕ 理化学研究所などが開発した「富岳」は、我が国としては「京」に続いて世界1位を獲得しました。また、「富岳」は、次世代コンピュータといわれる量子コンピュータではありません。

 

5. 我が国ではレアメタルの産出は少ないが、レアメタルの代替材料の開発を盛んに行っており、ネオジムやジスプロシウムなどの材料を利用した製品の開発に成功し、これらの製品が世界の市場での生産シェアの上位を占めるようになった。しかし、これらの材料は軍事転用が容易であることから、日本政府は、令和元年からその管理を強化することとし、その一環として、ネオジムなど3品目✕の韓国向けの輸出管理を厳格化した。

✕ 韓国向けに輸出管理が厳格化されたのは、「フッ化ポリイミド」「 レジスト」「フッ化水素」の3品目で、これらはレアメタルではありません。

 

【講評】難易度:並

選択肢1を積極的に正解にすることはやや難しいですが、消去法で解けば、正誤判断に関わる時事や一般常識の内容自体は難しくありません。

 

 

 

【No.29】 近年の世界の宗教等に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. 2020年、米国は、イスラエルパレスチナの中東和平案を発表し、一定の条件の下で、パレスチナに独立国家の建設を容認した。 一方で、ユダヤ教キリスト教イスラームの共通の聖地とされるエルサレムを「イスラエルの不可分の首都」と位置付けるなど親イスラエル色が濃い内容であったため、パレスチナ市民の抗議行動を招き、トルコやイランなどもこの和平案を非難する声明を出した。

◯ そのとおり。

 

2. 2019年、ローマ教皇フランシスコが日本を訪問し、核兵器廃絶などを訴えた。教皇の訪日は、教皇✕のヨハネ・パウロ2世以来38年ぶりで、教皇の代替わりに際し訪日するのが慣例となっている。教皇とは、キリスト教全体における最高指導者を指し、カトリックプロテスタント正教会のいずれかから選出されるが、フランシスコ教皇は初めて東欧出身のプロテスタントとして教皇に選出された。

✕ 前教皇ベネディクト16世。38年前に来日したヨハネ・パウロ2世は、その前の教皇です。また、そもそもローマ教皇は、キリスト教全体における最高指導者ではなく、キリスト教の中のカトリックの最高指導者です。

 

3. 近年、日本では宗教に関連する遺産が世界遺産に登録されるなど、宗教的文化財への注目が高まっている。2017年に隠れキリシタン独特✕の文化伝統の証拠である「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群世界遺産に登録されたことに続き、2019年に百舌鳥・古市古墳群世界遺産に登録された。これらの古墳群の盟主的位置を占める大仙陵古墳は、中国伝来の仏教の影響を受けた飛鳥文化✕を代表する遺跡として知られている。

✕ 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、隠れキリシタンキリスト教)ではなく自然崇拝に関連した遺産です。隠れキリシタンに関連する日本の世界遺産としては、2018年に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」があります。また、大仙陵古墳仁徳天皇陵古墳)は、5世紀の古墳時代のものとされており、日本に仏教が伝来する538年より前のことになります。

 

4. 中国西部の新疆ウイグル自治区には、仏教を信仰するウイグル族が多く居住しており、中国西南部チベット自治区には、イスラームを信仰するチベット族が多く居住している。中国当局によるウイグル族を始めとする少数民族などに対する締め付けが続いており、国際社会からは中国の人権状況を憂慮する声が上がっている。中国当局内モンゴル自治区に対しても統制を強め、2020年には、同自治区の公立学校におけるスカーフの着用禁止を決定した。
✕ ウイグル族が信仰するのはイスラームチベット族が信仰するのは仏教(チベット仏教)です。また、中国当局内モンゴル自治区の学校に対して行った統制は、モンゴル語から標準中国語へ変更です。新疆ウイグル自治区では、イスラム教徒の女性の伝統的な衣服「ブルカ」の着用を公の場で禁じるなどの統制が行われています。なお、公立学校におけるスカーフの着用禁止は、2004年にフランスで行われて問題になりました。

 

5. 近年、米国の民主党を支える勢力の一つとして、福音派が極めて重要な役割を担っている。聖書の記述を重視し、人工妊娠中絶や同性婚への反対を主張する福音派は、カトリック教会と協力しその信者を民主党支持✕に動員している。一方、共和党は、福音派に敵対的な立場をとっており、2017年のトランプ大統領の就任演説において、彼は歴代大統領として初めて聖書に手を置きながらの就任宣誓を拒否した✕ 。

✕ 福音派は、共和党との結びつきが強くなっています。2020年の大統領選挙でも、共和党トランプ大統領の支持基盤になりました。また、トランプ大統領は聖書に手を置きながら就任宣誓を行っています。

 

【講評】難易度:並〜やや難

選択肢2、3、4は時事というより一般常識、歴史の問題です。選択肢5については時事としては内容がやや古いですし、問われている点自体もやや細かいので、正誤判断は難しいといえます。ただ、1は積極的に◯にしやすいので、結果的にはそれほど難易度の高い問題ではありません。

 

 

 

【No.30】近年の我が国のデジタル化に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. キャッシュレス決済とは、現金以外で代金を即時決済する方法の総称であり、近年普及した電子マネースマートフォン決済などを指すが、即時決済でないクレジットカードなどは含まれない✕ 。国民への浸透のため、2019年から2020年にかけて、政府はキャッシュレス決済による支払いに対して消費税を軽減する✕キャンペーンを展開したが、その中でスマートフォン決済の一つがセキュリティの脆弱性により不正利用される事件が発生し、中断された✕。

✕ キャッシュレス決済という以上、「キャッシュ=現金」が「レス=不要」な決済にクレジットカードが含まれるのは当然です。また、「即時決済」についてはその定義にもよりますが、少なくともスマートフォン決済の中にも即時決済とはいえないものもあるので、これもキャッシュレス決済の定義とは関係がありません。また、キャッスレス決済に関して行われたキャンペーンは消費税を軽減するものではありません。また、中断されたという事実もありません。

 

2.クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人に企画への資金提供を呼び掛け、趣旨に賛同した人から資金を集める方法をいう。単なる寄付とは性格を異にし、出資者には企画の利益からの配当や、モノやサービスなどの特典といったリターンが発生する。民間では幅広く利用されているが、国や自治体では出資者へのリターンの発生が公共性の観点や「ふるさと納税」との重複から問題視され、利用が制限されている✕。

✕ クラウドファンディングの利用が自治体などで制限されているという事実はありません。自治体などが行うクラウドファンディングのことを「ガバメントクラウドファンディング」と呼び、すでに多くの自治体が利用しています。

 

3. 近年ではインターネットの普及により、誰もが容易に情報の発信者となることが可能になっている。そのような中、画像加工アプリなどで自らをより良く見せた「盛れてる」写真を投稿することをデジタルタトゥー✕と呼ぶ。デジタルタトゥーは主に若年女性に人気であるが、いわゆる炎上の原因となったり、個人を特定され犯罪に利用されるなどの被害が発生している。これに対し、 国に投稿の削除を求める訴訟も提起され、表現の自由との関係が問題となっている。

✕ 「デジタルタトゥー」とは、インターネット上に公開された書き込みや個人情報などは、いったん拡散してしまうと、完全に削除するのがほとんど不可能であるという意味です。「入れ墨=タトゥー」は、いったん入れてしまうとと完全に消すことが難しいことに例えた表現です。

 

4. 新型コロナウイルスへの対応において、行政サービスにおけるデジタル化の遅れなどの課題が浮き彫りとなったことから、政府は、2020年秋に、デジタル庁の設立の方針を示した。同年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」では、デジタル庁は、政府情報システムの統合・一体化の促進や、マイナンバーカードの普及の加速化等の推進といった業務を司ることとされている。

◯ そのとおり。

 

5. スマートシティは、近年登場した新しい概念で、定義が確立されていないが、主に「都市構造を空間的に集約し、郊外への拡大を抑制するコンパクトな都市のあり方」といった意味✕で用いられる。我が国でも、5G通信が一般化した社会であるSociety 5.0に向けてその実証実験が行れているが、その主体は国や自治体であり、収益性の観点から参入に慎重な企業などの民間部門をどのように引き込むかが課題となっている。

✕ 選択肢にある「都市構造を空間的に集約し、郊外への拡大を抑制するコンパクトな都市のあり方」とは、スマートシティではなく、コンパクトシティの定義に近いといえます。スマートシティとは、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、計画、整備、管理・運営等が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」といった意味で用いられます。

 

【講評】難易度:並

選択肢1と3については、一般常識以前の内容です。キャッシュレス決済にクレジットカードが含まれないわけはないですし、デジタルタトゥー、特に「タトゥー」の意味を考えれば、全くナンセンスな選択肢だということはすぐに分かります。2と5についても正誤判断のレベルは高くないので、消去法で解けば5を正解に選ぶことは難しくありません。