筆記試験攻略の考え方

羽生善治

将棋に詳しくない人でも、一度は聞いたことのある名前でしょう。史上初の七冠達成、通算タイトル獲得数歴代1位など数々の記録を持つ、歴代最強と呼ばれる棋士です。

このように将棋がめっぽう強いことで羽生善治が有名なのは当然ですが、同じように注目したいのは、将棋に対する羽生の考え方です。実はその考え方こそが、羽生の強さの根源ではないかと言われています。

羽生は、将棋の対局が終わると、その勝負で自分が勝とうが負けようが、勝敗そのものにはほとんど興味を示さない様子で、まるで他人事のようにその対局を振り返って分析するそうです。

羽生にとっては、将棋に勝ったり負けたりするのはあくまで結果に過ぎず、結果よりもっと重要なのは、将棋のプロセス自体を突き詰めて考え抜くことなのだそうです。まさに「将棋そのもの」にしか関心がないことの現れだと思います。

そして、その考え方は、将棋となんら関係がないと思える公務員試験の攻略方法にも通じるものがあります。

一般的に、受験勉強をしていると「自分ができるようになりたい」「自分の点数を伸ばしたい」「自分が合格者になりたい」と、どうしても「自分」を基準にして物事を考えがちです。そのようなスタンスに立つと、「自分はなぜでできないんだ」とか「自分はなんで点数が上がらないんだ」と、すべてを「自分」の問題だと捉えるようになります。

しかし、本当に試験に強い人はそう考えません。その逆です。

試験に強い人は、試験に対して「自分」を中心に思い悩むのではなく、試験に対して「自分」を客観的に突き放します。そして自分ではない「合格者」という偶像をイメージし、「合格者とはどのような存在なのか」「合格者になるにはどのようなプロセスが必要なのか」を徹底的に考え、そのイメージ上の「合格者」に限りなく近づくことだけを考えます。

筆記試験には必ず正解があり、正解に至るプロセスもほぼ決まっています。「自分」のレベルを上げたい、勉強範囲を広げたいという意識を持つのではなく、これまで「合格者」が通ってきたプロセスへひたすら正確にターゲティングしていくのです。

それは、合格に必要な知識を「広げる」のではなく、逆に「絞っていく」イメージです。

試験に個性はありません。自分が自分がと自意識過剰になったり、自分らしく合格したいなどと考えると、実は遠回りになってしまいます。

受験で自己実現など追求する必要はありません。対象とする試験を出来る限りドライに捉え、テキストや過去問集を適切な方法で解き、違和感がなくなるまで繰り返す。それが多くの「合格者」が辿ってきたプロセスであり、そういう考え方を持つことで、試験に限りなく強くなることができます。